佐藤初女さんにサインをもらっているところ。 |
私が初女さんを知ったのは、ある雑誌のインタビュー記事でした。青森県岩木山の麓にある「森のイスキア」で、悩みを抱える人たちを受け入れ、心のこもった料理でもてなし、一緒に食卓を囲み、寄り添い続けるおばあさん。そこで過ごしたことで救われた人たちはたくさんいて、初女さんの作ったおにぎりを食べたことで自殺を思いとどまった人もいるそうです。「こころの入った手作りを食べていると、こころが満たされていきます。」と、あれこれ説教をするわけでもなく、とにかく受け入れ、その人のために心を込めて料理をする・・・素晴らしいなぁと思いました。
初女さんの著書にもありますが、
「人が他の人を癒すということは、できることではないとわたしは思います。癒しとは、自らの気づきから起こってくるものなのです。」
「その人の言うことが正しいのか、わたしの思うことが正しいのか、それは誰にもわからないこと。 それを判断できるのは、神様だけと思います。」
といった考え方、私もこういう仕事をする中で、いつも心に留めていることなので、とても共感できるのです。
初女さんにしていただいた両手の握手は、丁寧であたたかくて、祈りのようでした。サインも、一人一人言葉を変えて、一字一字ゆっくりと、心を込めてして下さいます。
私は「人の言葉は芳ばしく」 と書いていただきました。
芳しい言葉・・・。
素敵な表現ですよね。
私たちは忙しかったり疲れていたりするとつい、楽な方を選んでしまいがちです。でも、手間がかかったらその分、代わりに得られるものもあるものですよね。
私も先月、一人旅をしながら、いちいちバスや電車の時刻を調べたり、並んでチケットを買ったり、宿を予約したり・・・がふと面倒になって「ツアーだったら楽だよなぁ」と思ったりしましたが、自分でやるからこそ、その国のやり方を知ることができたり、その国の人の日常生活が垣間見れる面白さもあることを途中で思い出して「面倒臭がったらせっかくできる体験を逃してしまう!」と思い直したばかり。
仕事も同じことが言えます。手間をかけた仕事ほど、気づきも多い。
便利やスピードが全てじゃない、スローライフという価値観も定着した今、心をこめ、手間を惜しまない初女さんの仕事ぶりには、改めて「それがいい」と安心させられます。ずっと変わらずそうしてきた初女さんにしてみれば、ただただ、当たり前のことなのでしょうけど。
私もいつか、初女さんのようなおばあさんになりたいな。
まずは日々を、丁寧に、感謝して、生きることから。