3/3に送ったメルマガが結構反響あったので
ちょっと加筆して、ブログにも残しておくことにしますね。
***
こういう仕事をしているとなぜか、
あんまりテレビを見ない、と思われることも多いですが、
私はたまに書いている通り、結構見ます。(笑)
皆さん、金曜の夜中にテレ東でやってる
「山田孝之のカンヌ映画祭」ってドキュメンタリー、
見たことあります?
私はその前にやってるドラマ
「バイプレイヤーズ
〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」
が、内容はともかくとして、なにせ役者陣が
遠藤憲一、大杉蓮、田口トモロヲ、寺島進、松重豊、光石研、
って揃いも揃ってるもんで、
つい見てしまうんですが ^ ^; 、
それが終わるといきなり始まるんですよ。
山田孝之が超・ガチで、
本気でカンヌを目指して映画製作を していくのを、
ずっとカメラが追ってるんです。
その直前に、6人の名脇役のおじさまたちが
いい〜感じに力を抜いてやってるのとは思いっきり真逆で。
力入りまくりのマジ。 アツイ。
で、こないだ一回見たのがたまたま
「#7 山田孝之 覚醒する」の回だったんですが、
カンヌで賞もとっている河瀬直美監督に
「本当にカンヌに行きたいならまず私の作品に出演してみない?」
と誘われて、山田孝之が河瀬監督作品に出演することになった
場面、だったんですよ。
ところが、撮影現場で彼は、役の心境ともリンクしすぎて、
本当に辛そうに、涙を流し出すんですねぇ。。
自分には、ずっと、居場所がない、と。
監督は、共演の芦田愛菜ちゃん(もう大人!)も近くに呼んで、
その場に座り込んだまま動かない彼に寄り添うように、話を始めます。
思いっきり、ガチです。
こんな内面の葛藤まで、包み隠さず見せてくれるんだ・・・
ってことに、びっくりしました。
河瀬監督も、
ずっと自分も居場所のなさを感じてきて、
やっと映画というものに居場所を見つけられた気がしてるから
その気持ち、分かるよ、
といったような言葉がけをするのですが。。
なんともいえない空気が流れておりました。。
あれだけ仕事でも成功していて、
奥さんと子供もいて、
仲間も多くて、
でも「居場所がない」という思いは埋められない。。
こういうのは、外側のものでは埋まりませんからねぇ。。
深い孤独。
悲痛な叫び。
沈黙の中に、痛いほど伝わってくるものがありました。
「全部手に入れてるのに居場所がないなんて贅沢だ!
私なんてどれも持ってないんだから、もっと孤独だ!」
って思う人もいるかもしれないですよねぇ。
でも、
「成功」が手に入れば居場所は手に入る、
と信じている時の孤独と
そう信じてたのに、そうじゃなかった、
ってことを知ってしまった時の孤独。
これ、後者の方が
「じゃあ一体、どうしたらこの居場所のなさを 埋められるんだ?!?」
って、 抜け出す術が全く分からないが故の絶望、
って意味では もっとキツイのかもしれません。
まあでも、
その痛みから、彼は創造していくのでしょうね。。
こないだの回「#8 山田孝之 キャスティングをする」も、
思わず「マジかぁぁ…」って、笑っちゃったなぁ・・・
村ジュンに芦田愛菜ちゃんの父親役を頼むんですが、
リアルな首つりシーンから始めたいから、いきなり
「今日からできれば週5は、首つりの練習して下さい」って。
首つりの名人に会わせて、技を見せて、
「これをやって欲しいんです」って、言い放つんですよ。
名人は、できるようになるまで7年かかったという技を!
そりゃあ、村ジュンはきょとん、としますわなぁ。。
「それ、吹き替えとかじゃなくて、
僕がやらなきゃ、、だめですか?」
って、なりますわなぁ。。
だって、間違ったら死んじゃうし。
少なくとも、喉はだいぶ傷めてしまう。
山田孝之に挑戦的な目で
「・・・いいんですか?村上さんは、それで。」
って言われて、受けとめた村ジュン、偉いわ。大人だわ。
結構ねぇ、、メチャクチャなんですよ。^ ^;
(しかもこの次の回「#9 村上淳 木になる」では、
村ジュンの降板劇が… 繰り広げられておりました。。
いやいやいやいや…って感じですよ。
全く「いい人」なんかにはなろうとしない、
一切の妥協がない山田孝之、
ハンパない振り切り方が、もはや尊敬の域です。)
私は一応、
CDジャケットやらプロモーションビデオやら
広告やらCMやら、
映画はないけど、そういった現場にいた経験はあるので、
制作現場のスタッフの気持ちを
ついつい考えて見てしまうんですけども。
これについていくのは
エライ大変だわぁ・・・って感じなのです。
現場泣かせ。^ ^;
一緒に制作している山下敦弘監督も、
「いや、それは・・・」ってたびたびの困惑顔。
リアル過ぎ。
サイトにある山下監督と松江監督のコメントから
いろんな思いがにじみ出ていて
ただただ、「お察しします…」って思いました。。^ ^;
監督:山下敦弘
山田くんから連絡があり、ひと夏を一緒に過ごしました。過ごした、というより修行のような毎日で、結果お尻に変なおデキが出来たりと…まぁ言い訳は辞めておきます。誘われたけど自分で決めた事なんだし…。ただ山田くんと一緒にいると自分の中の何かが壊れてしまうのでこれからは誘われても山田くんの話に乗らないようにします。山田孝之は変な魔法をもっているので皆さんも気をつけてください。
監督:松江哲明
この企画が決まった時「一体、何人の先輩監督たちに怒られることになるんだろう」と思いました。実際、すでに怒られています。かなり本気で(それも撮りました)。けど仕方がないのです。山田孝之が先頭に立っているのだから。正直、撮影素材を観ながら「やりすぎじゃないか。でも…もっとやれ!」と思う自分がいます。山田くんに巻き込まれ、翻弄された日本映画を代表する俳優、女優、監督、スタッフ、そしてカンヌの皆さんには「ご迷惑をおかけしました」としか言いようがないのですが、迷惑をかけた分、とんでもない映像は撮れていることは保証できます。
嗚呼、おそるべし、山田孝之。
無事、最終回まで放送されますように。
でも、
今までにない映画を作りたいから、
今までにない発想でやらなきゃだめだ、
という頑なな信念のもと
突き進む山田孝之を誰も止めることはできないのであった。。
それに巻き込まれていく皆さんを見ているのがですね、
なんとも… いろんな意味で、面白いのですよ。
私もかつて、そんなふうに、
さんざん巻き込まれながら(笑)制作って仕事をしてきたもので。
懐かしい感覚を思い出します。。
何かを生み出すって、大変。
だけど、面白い。
とはいえねー、
私は「痛みからの創造」にはもういっぱい触れたから、
残りの人生は「喜びからの創造」がいいかな〜。
以前、マネージメントをしていて
一緒にキユーピーの広告とCMを作ったアートディレクターの結婚式で、
尊敬するコピーライターの秋山晶さんがしてくれたスピーチが
(「人は、人を思う。」「愛は食卓にある。」とか)
とても印象に残っているのですが。
幸せな人は、幸せなデザインができる、
幸せなデザインは、人を幸せにする、
幸せは伝染する、
幸せはお裾分けできる、
だから、幸せになって、幸せなデザインをして、
世の中を幸せにしてください、
って、そんな感じの内容でした。
細かいニュアンスは再現できないけど。
あぁ、私もそういう発し方をしたいなぁ、って
思ったのでした。
人って、
とことん面倒くさくって愛おしい生き物ですなぁ。
さらけ出されるほどに、
そう思います。