唯一写真撮影が可能な廣村正彰さんのインスタレーション。 一光さんが色彩選定した、タント紙とカッティングシートが使われてます。 |
以前のお仕事の関係で、イッセイミヤケ事務所の方にチケットをいただき、六本木の21_21で「田中一光とデザインの前後左右」展を見てきました。
面白かった!
私は今まで、アート雑誌の編集やったり、CDジャケットの制作したり、ビジュアルプロデュースのお仕事したりしてきたので、もともとグラフィックデザイン自体にとても興味があるんですが、日本の伝統文化もとても好きなんですね。一光さんは琳派、浮世絵、伝統芸能などにも精通されていて、そういった本の装丁も数多く手がけているので、それはもう、余計に、見ているだけでわくわくさせられました。
今回の展示でありがたかったのは、展示された本自体は見たくてもめくることはできないようになっているのですが、その代わり、iPadでデータ化された中身を見られるようになってたところ。本のデザインというのは、全体を通して意味を成すものですから、それがあるおかげで一光さんの意図が見えてくるのが興味深かったです。
そこで見つけた「JAPANESE COLORING 日本の色彩」という本、ネットで古本を見つけて早速購入してしまいました。ついつい「色」には反応してしまいます。(笑)
日本人が色彩をどのように捉えてきたのか、
「紅白」「緑」「藍」「墨」「黄金」「多彩」に分けて、日本文化を美しい写真とともに紹介している本なのですが、日本人なら誰もが何気なく日常の中で見ていた風景を「色」でくくることで、「色」を通した日本人の価値観に改めて気づかされるんですね。
例えば日本には「紅白」という考え方があります。この本、表紙が日の丸弁当になっているんですが、私たちの国旗自体がまさにそう。赤と白。吉田光邦さんは書いています。
「赤を生命の色とし、復活の色とするのは世界に共通の感覚である。血を思わせ、太陽を思わせる赤は、いつも人間に生命力を注ぎこむ力のしるしであった。
これに対して白は、日本では神の色と考えられた。神は純白ですこしの汚れもない、純粋な存在であるから。そこでこのふたつを組み合わせることは、いつも神の力による限りない生命力、限りない幸福を象徴するものとなる。」
個人的には、私が古事記などから感じるのは、日本人にとって神はとても人間臭い存在で、純白純粋とはまた違ったように思うので、白=純粋=神ではなく、白=光=神という方がしっくりきます。でも、白と赤の組み合わせの意味するところには同意。また、紅白歌合戦のように、男性性と女性性の象徴としても使われますよね。
ちなみにオーラソーマにおける色の考え方は、特定の国や宗教には縛られていません。もっと大きな、「地球」とか「人間」という括りでの話になってきますので、「この色にこんな意味があるんだ」と驚くこともしばしば。同時に、「赤にはやっぱり生命力とか情熱、怒りっていうキーワードがあるんだなぁ」と、持っているイメージとの合致に納得させられることも多々あります。こうやって、「色」を意識しながらまたまわりを見回してみるのも、楽しいものですよ〜。
今回の展示で一光さんのデザインを見ていたら、また違った視点からこの世界を見直したくなりました。「たかがデザイン」と思われる方もいるかもしれませんが、「されどデザイン!」なのです。一光さんは著書の中で書いています。
「傷ついた地球の再生を考えるデザイン、非西欧文明の再認識、コンチネンタル・スタイルからの脱出、快適追求の後退、きれい事でない国際交流、地球人認識から発生するさまざまな思想の衝突、新品のツルツル、ピカピカではない美意識の復興。それらが二十一世紀デザインの最大の課題ではないかと思う」