世田谷美術館に、志村ふくみ「母衣への回帰」展を見に行って来ました。
私がふくみさんを知ったのは、神奈川から京都まで、
ふくみさんに染色を学びに行っていたお客さんからです。
紬織の人間国宝。
草木からの自然染料で染められた糸によって作品を織り上げている、というところに、興味を魅かれました。
展示では、最初にいきなり、
直筆の筆文字でこんな言葉が紡がれていました。
私達は光を宿す宇宙の星屑である。
その小さな一片一片が地上に降り、
人間や草花、小鳥や虫たち、石など
すべての生類としての生命を与えられ、
それぞれ、愛おしい生命をはぐくんでゆくのである。
しかし人間のみは自己と他という区別を知り、
一ではなく二(自他)という罪を負ったために
現世において苦しみ、悩み、また喜びや楽しみを
共に味わうこととなった。
生者必滅の理を知ったのである。
その苦患の中で人は思考し、
学問や芸術という原石を研磨して、
言葉や色を創り出し、
美という賜物を授かったのである。
この人は、スピリチュアルな考え方に通じている人なんだ、
って思ったら、70代でシュタイナーを研究したのだそうで。
すごく探究心旺盛な方なんですね。
光とは何か、色とは何か、を追い求めて、
古事記や万葉集、源氏物語などの日本文学に植物染料の源を、
ゲーテの色彩論やシュタイナーの言葉に宇宙の摂理を、
見出していく。。
ますます彼女に興味がわきました。
その探究心ゆえ、著作もたくさんあるんですね〜。
すごい。
ゲーテが「色彩は光の行為である。行為(能動)であり、受苦(受動)である」と言っているんですが、それについてふくみさんは、
「色は光の受苦である、という言葉がある。
私がこの言葉に出会ったことが、ずっと続けている基盤ではないだろうか。その色の質を受けとろうとしている。」
と書いていて、それもなんだか響きました。
スピリチュアルであろうとなかろうと、
目の前の仕事に真剣に取り組み続けると、
それは結果、スピリチュアルな道に通じていくのだな、と思います。
これは染色だけでなく、農業でも何でも。
自然と対峙している人は、特に。
織物を始めたきっかけについて
「貧しくとも、未経験でも、
何かそれを凌駕するものがその人にのりうつったら人は仕事をする」
とも書いていて、相当な力強さも感じましたね。
↑これを見ると、ふくみさんがどんな方か分かりますので、ぜひ。
「色は、単なる色ではなく、その奥に何かを秘めているのではないか。」
「色に命がある。」
ひとつひとつの言葉が、響きます。
鶴田真由さんが監督、高木由利子さんの写真と映像が
一体となったドキュメンタリー作品の一部。↑
「いっぺん崩してみたいと思って」
「固定されたものから、どうやって流動的なものを作っていくかね」
ふくみさんの色へのこだわり、
作品作りへの姿勢が伝わる言葉が、たくさん。
これも。
人生を織物に例えています。
これも。
「藍色は、生命そのもの。」とふくみさん。
月の満ち欠けに合わせると、
藍はうまく立ってくれるんだそう。
新月の頃に仕込むと、満月の頃にいい色を出してくれるのだとか。
「闇から出てくる青と、光から出てくる黄色とが、
この世で合体した時に生まれる色、緑。
緑子なんです。子供なんですよ。生命の誕生。」
藍は、瓶から取り出して空気に触れた瞬間だけ、
緑色を発して、すぐに消えてしまうんだそう。
不思議。
「命は緑なんです。だから留めておくことはできない。」
と別の映像で言っていた言葉も印象に残っています。
展覧会は11/6(日)までやってますので、
興味のある方は行ってみて下さいね。
前期は10/10まで、後期は10/12〜11/6となっていて、
大幅な展示替えがあるそうです。
詳しくはこちらをどうぞ。